2017-01-01から1年間の記事一覧

帰宅して口きかぬ子や冬苺  はるみ

私の住んでいる町はいわゆる学園都市で、私が帰宅する時、しばしば下校の中学生とすれちがう。声が大きいので、彼等の会話が近づいてくる時から、すれちがって、遠ざかる時までよく聞える。 男子校なので、部活の話やスポーツの話題が多いいけれど、定期試験…

山茶花やすれちがふ子に日の匂ひ  はるみ

我家の近くの小学校では、落葉の季節になると、住宅街の落葉を掃く、という課外授業がある。桜並木の紅葉した落葉を子供たちがグループに分かれて掃いているのは、童話の本の1ページを見ているよう。 一心不乱に作業している子もいれば、ただただ落葉をかき…

声がはりせし少年や初嵐  はるみ

私にとって4番目の孫がこの夏オランダの友人宅に出かけた。学校友達のお宅にうかがったと聞いていて、どんな経験をしたのか、他所のご家庭で礼儀正しくふるまえたのかしら、などと余計な心配をしていたけれど、まず、メールの動画で、帰国した彼に飛びつい…

笑ふたび太る子どもや草の花  はるみ

1昨日長野から戻った東京は蒸し暑かったと言うのに、今日は10月なかばの気温。こよみの上の夏はとっくに終わっているけれど、この違和感は何? つい、この間まで、長野では芙蓉が日ごとに真っ白な花や底紅の花を咲かせ、野菊が咲き乱れるていたのに、折か…

門川の風を呼び込む麻のれん  はるみ

以前、川越にいった時には記憶になかったけれど、この度川越を訪ねてみると、昔、小江戸と呼ばれた頃は、水運で栄えたところだけあって、まわりに門川がある店があってなかなか良い雰囲気。 そして、その門川をまたぐようにして木のベンチがおいてある。涼し…

樹上より少年の声風香る  はるみ

モンマルトルのホテルの窓から12本のマロニエの樹がみえる。鳩が朝からしきりと花をつつき、花びらが石畳にハラハラと落ちる、窓の下の公園には、パリ市の飲める水道がでているので、散歩の人が時々立ち止まる。石畳の坂道だというのに、ジョギングをして…

讃美歌に和す鳥声や復活祭  はるみ

4月10日から21日までパリに出かけた。前回はオペラ座近くに泊まり、さくらと木蓮の花が咲き乱れるパリに13日滞在した。3月はこんなに暖かい日もあるかしら? と思うほどうらうらとしていた。 4月はどうかしら、と夕方のパリにつくと、マロニエの花ざ…

庭で切る子供の髪や木の芽風  はるみ

今日は会社の入社式のニュースがたくさん報道された。その中に両親が出席している映像があって、なんとなく違和感を覚えた。昔、日本の歴史に登場した十代の若者たちを思うと、現代の親は子供が成長するのが、いやなのだろうか。子供の方も当然のように嬉し…

雪止みで背に睦む鳥の声  はるみ

建国日の前日、山の家に7人の来客があった。週末の金曜日世田谷でテニスをしていたら雪が降ってきたので、早めにやめて、長野に向かった。日本海側の鳥取県は90センチの雪と報道されているが、長野は60センチほど。都会から来る若者たちには、ほどよい…

渓流の見ゆるバス停鳥の恋  はるみ

明日は立春というのに、毎日雪の被害ばかりがニュースになっている。いくら粋がっても、なかなかコートが手放せない。それどころか、みんな、マフラーとマスクでガードしている。マスク美人が増えて、電車の中の景色はそれなりにいいけれど。早く、コート脱…

公園に猫の新顔日脚伸ぶ  はるみ

猫は人に懐かない、と言われるけれど、猫同士はずいぶん仲良しで、いつも通る公園の隅は、風が来ないからか、夕暮れになると猫が集まっている。散歩や買い物の帰りに見ているので、顔ぶれは大抵覚えているけれど、近頃新顔があらわれた。 日本種ではなくて、…

枯れきって林明るき日なりけり  はるみ

大寒波がやってきていると、連日テレビの天気予報が言う通り、北海道、青森、新潟の降雪は記録的な深さのよう。けれどなぜか東京は晴れの日が続いている。そして、東京の私の部屋の前はヒマラヤ杉や金木犀、柊などの他は見事に木々は葉を落し、枯れつくして…

相生の一樹切らるる寒さかな  はるみ

ご夫妻で俳句を趣味にされていた方がご主人を亡くされた。生前できるだけの事はして差し上げたので、悔いはないときいていた。ひと月ほどで小旅行にも出かけ、溌剌と日々を過ごされていた。心を尽くして見送れば、案外さらっと普通の日常を取り戻せるのかと…