2013-01-01から1年間の記事一覧

傾けてガルボになれぬ冬帽子 岩永はるみ

「ガルボ」ってなんですか? と訊かれたことがある。そうか、「肉体の悪魔」も「アンナ カレーニナ」も見てないんだ、と考えたら、私自身もリアルタイムで見た訳ではなかった。伝説の古い映画を見たいと思って見た事に気がついた。それなら、ガルボは知らな…

外つ国の少女溶け込む踊の輪 岩永はるみ

10月に松本城にいったところ、外国人の多さに驚いた。英語、フランス語、中国語、イタリア語、何語かわからない言葉まで飛び交っている。庭で開催している菊花展や盆栽を熱心に覗き込んでいた。 今朝、高野山の紹介をテレビで見たら、そこにも世界各国の方…

笹舟を流す門川今朝の秋 はるみ

今年は永久に秋が来ないのでは、と思うほど9月が暑かった。そして、昨日は10月の3日に、東京は30度を記録した。 いつもなら、8月の半ばにはうるさいぼどいる軽井沢の赤蜻蛉や鬼やんまも9月になってから、姿をみた。その話を娘にすると、8月でも、浅…

飛魚の鳥になる夢夕茜 はるみ

久しぶりに叔母から電話があった。従兄弟が6月3日に亡くなって、昔のことがいろいろ思い出されたと言って、私の知らない親戚の消息が知らされた。 だんだん、年上の親族が向こうの世界にいってしまって、その度にアルバムの整理を急がなくては、不用なもの…

梅雨寒や猫のもぐりし鉋屑 はるみ

今年の気候は乱れに乱れ、コートを着たり半袖になったり忙しい。一体あしたは何を着たらいいのかしら? と毎晩天気予報に注意している。そんな週末、まだ夏にはほど遠い軽井沢に行ったら、なんと蟬の声が‥‥。 庭に何か異変が、と思うほどの蟬の声にやっと気…

坂の名に伊達や南部や走り梅雨 はるみ

今年は例年より早く5月の終わりに梅雨入り宣言があった。この季節になると、なぜか決まって思い出す事がある。昔々、結婚して半年ほどたったある日、夫の父から一通の手紙が届いた。季節の挨拶のあと、「ところで家にひよこが生まれました。裏庭を元気に歩…

水切石の行方光りぬ暮の春 はるみ

この渓谷のゆったりとした流れ、透き通る水の美しさはなんと言ったらいいのだろう。仲間と一泊のテニスキャンプの帰途、嵐山渓谷を訪れた私たちは水の豊さと両岸にそよぐ緑の木々に圧倒された。しばらくは、ぼんやりと若々しい緑に見惚れ、水の底を見入って…

笑ひ声にふくらんでゐる春障子 はるみ

1年の内、およそ3ヶ月を軽井沢で暮らすようになって、何年になるだろうか。毎年、町役場に「1年で何日こちらに滞在しています」という報告書を出しているが、去年は丁度90日だった。9ヶ月都民、3ヶ月長野県民なのかしら。となんとなく楽しくなった。 …

指先に覚えなき傷冴え返る 岩永はるみ

寒波はいつも、立春の声を聞いてからの方がきつい。出かけそびれて家で古い切り抜きを整理していたら、面白い記事がみつかった。作家の花田清輝のパリの一文が、ノートに貼ってあった。 パリの墓地に二つのお墓が並んでいて、先にできた墓には、「ジャック …

のどけしや積木の家の赤い屋根 岩永はるみ

木の玩具には、子供を引きつける魔法がかかっているらしい。我家に古い積木の箱があるが、子供たちはうちの子もよその子もこの箱を見つけると、たちまち夢中になる。あっという間に牧場が出来て、飾り物の牛たちを入れていたり、高い高い塔を作りあげたりす…

囀りの光あつめて散らしけり はるみ

数年前北京を訪れた。前に『春燈』という俳句誌に書いた事があるけれど、その時の事。 私はどこの地に旅をしても、朝食のあとホテルの近くを散歩をすることにしている。その時も近くの公園へ歩いていくと、数人の人が鳥籠を持って歩いている。もしや、この先…

一枚ずつ賀状くりをる夜更けかな はるみ

このお正月の2日、小学校の同級生がひと足さきに、あちらの世に旅立った。病気が解った時は手遅れだったと聞いて、みんなの中で一番元気そうだったのに、と思ってもせんないことを思い、ふと、年賀状の箱を開けてた。やはり、その人の年賀状はなかった。1…