のどけしや積木の家の赤い屋根 岩永はるみ

 木の玩具には、子供を引きつける魔法がかかっているらしい。我家に古い積木の箱があるが、子供たちはうちの子もよその子もこの箱を見つけると、たちまち夢中になる。あっという間に牧場が出来て、飾り物の牛たちを入れていたり、高い高い塔を作りあげたりする。その瞬時に自分のイメージを形にする力に、いつも驚かされる。
 男の子はロケットや汽車と思っていたら、すてきな部屋を作る男の子がいたり、なぜかスキー場のジャンプ台を作る少女もいる。色は赤、緑、青、黄なのだけれど、その組み合わせもさまざまで、見ている私はいつも少し楽しい裏切られ方をしている。
 一見、それが何の形か解らない時でも、「それなーに?」と聞くと、「ここが川、ここが公園」と熱心な説明を受ける。「ふーん、公園なんだ」というと、「ここお砂場、ここトイレ」と説明も細かい。
 子どもの頭の中が楽しいことばかりだったらいいけれど、つらいことや、悲しいことでいっぱいだったら、積木で何を作るのだろう。赤い屋根の積木の家を見ながら、ふとそう思った。