新涼の糊きかせたる枕かな はるみ

まだ7月の終わりだというのに、庭のななかまどの梢が色づき始めた。台風の前触れの雨が樹々の様々な緑に白い雨を降らせている。辛夷の繁りが時々揺れて、小鳥の青い尾がみえる。
毎年思う事だけれど、夏の初め、伸び続けていた草がこの頃から急に静かに柔らかくなる。草の伸びる勢いにうんざりしていた筈なのに、「もう、いいの?」と言いたいぐらいに、伸びるのをやめてしまう。夜中に暖房を入れたりするのもこの頃から。秋が忍び足で、すぐそこまで確かに来ているらしい。
そのかわり、小鳥の明方の囀りが可愛いを通り越して少し煩いほど賑やかになる。予定では、休日ゆっくり寝ている筈だったのに、早起きの鳥の声に目覚め、思いがけない早朝の散歩をしたりする。肩がブラウスだけでは寒い。林の中に秋がもう育ち始めているのだ。
そんなある朝の事、林の中を散歩していると、日本羚羊の親子に出会った。私たちと羚羊はしばらく見つめ合った後、まず、羚羊の子どもが林の中に走り去り、続いて親が反対の林に消えた。
動物に詳しい人に教えて貰いたい。なぜ、反対の林に消えたのか。あの子どもはどの位で親の大きさになるのか。ネットでなく、出来れば森の番人のようなお爺さんに。