2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

新涼の糊きかせたる枕かな はるみ

まだ7月の終わりだというのに、庭のななかまどの梢が色づき始めた。台風の前触れの雨が樹々の様々な緑に白い雨を降らせている。辛夷の繁りが時々揺れて、小鳥の青い尾がみえる。 毎年思う事だけれど、夏の初め、伸び続けていた草がこの頃から急に静かに柔ら…

海に向くホテルの小部屋明易し はるみ

四方を海に囲まれたオランダの旅が忘れられない。日本も島国だけれど、小さな島が海より低い国というのが中々納得出来なかった。アムステルダムを離れて田舎の方に行った時のこと、行きたい島が地図の上ではすぐ目の前にあるのに、周りの運河に橋が見つけら…

端居して松の枝ぶり見てゐたる はるみ

夫の好きなものは今のところ、C家の飼い犬のZ君と庭のハンモックらしい。昨日、気持よく晴れた青空にハンモックの上で一休みしようとしたら、ハンモックが真ん中で裂け、もんどりうって草の上に落ちた。夫がその写真を娘に送ったら、父が怪我でもしたかと、…

向日葵や国境守る兵若き はるみ

ドイツのノイシェバインスタイン城に2度ほど夫の車の運転で行ったことがある。その裏の鬱蒼とした森のなかに、小さくて簡素な国境があった。私たちの通った時には暗いしめった森に、太い道を閉鎖する木のゲートが開いていて、国境を守る兵士はいなかっったが…

山裾の駅舎眠たし桐の花 はるみ

軽井沢の野鳥の森の中に、昔から天然の湧き水で出来た池がある。冬はスケート場になって、土地の子どもたちが遊んでいたらしい。それが、数年前に人工の手を加えて素敵なスケート場になった。10メートルはある池の土をすくい、新しい土を入れて電線を通した…

賑やかに別れて淋し蛍狩 はるみ

その夜は親しい誰かれを誘って等々力渓谷の蛍狩に出かけた。何処かで飼育された蛍と聞いていたが、昼間の緑滴る渓谷とは違って、無数の光がもつれ飛ぶ様子は、やはり目を奪われるものがあった。みなしばらくは、無言でその光景を忘れまいと、一心に見ていた…