2018-01-01から1年間の記事一覧

ままごとの母わがままや赤のまま はるみ

先日、娘夫婦の友人と田舎の週末を一緒に過ごす機会があった。そのお嬢さんが2歳で可愛い盛り。木の積み木をしていたので、隣で見ていたら、「これ、一緒にしていいのよ」と誘ってくれる。まんまるの目や長い睫毛が天使のようで、12歳の孫娘もみんなもすっか…

二人では行けぬ彼岸や秋の虹 はるみ

最近玄関に小さな鏡をかけた。訳は、ある日のこと、夫が「行ってきます」私が「行ってらっしゃい」とやり取りの後、夫をふりかえると、何と夫の鼻にテープが付いている。鼻腔拡張テープというもの。安眠のためのテープらしい。「え、そのまま行くの?」「そ…

友の旅こたびは長し鰯雲 はるみ

昔はあの人を近頃見かけないな、と思うとパリやら、ローマやらに旅行していた。そして、帰国後の旅の話はおかしい事も、失敗した事も、聞くだけで旅の楽しみのお裾わけを頂いたようで、幸せな気持ちになれた。 そう言う自分たちの旅も夕焼の美しさにひかれて…

八月の相語りゐる遺影かな はるみ

今年の台風は気ままにやってきて、家や学校、農家の大切な作物を台無しにしていく。今夜も13号というのが本州に上陸するらしい。庭の花々も明日か明後日ひらく蕾がたくさんあるけれど、きっと明日は倒れた花や小枝の後片付けに追われることと思う。 これが農…

新涼の糊きかせたる枕かな はるみ

まだ7月の終わりだというのに、庭のななかまどの梢が色づき始めた。台風の前触れの雨が樹々の様々な緑に白い雨を降らせている。辛夷の繁りが時々揺れて、小鳥の青い尾がみえる。 毎年思う事だけれど、夏の初め、伸び続けていた草がこの頃から急に静かに柔ら…

海に向くホテルの小部屋明易し はるみ

四方を海に囲まれたオランダの旅が忘れられない。日本も島国だけれど、小さな島が海より低い国というのが中々納得出来なかった。アムステルダムを離れて田舎の方に行った時のこと、行きたい島が地図の上ではすぐ目の前にあるのに、周りの運河に橋が見つけら…

端居して松の枝ぶり見てゐたる はるみ

夫の好きなものは今のところ、C家の飼い犬のZ君と庭のハンモックらしい。昨日、気持よく晴れた青空にハンモックの上で一休みしようとしたら、ハンモックが真ん中で裂け、もんどりうって草の上に落ちた。夫がその写真を娘に送ったら、父が怪我でもしたかと、…

向日葵や国境守る兵若き はるみ

ドイツのノイシェバインスタイン城に2度ほど夫の車の運転で行ったことがある。その裏の鬱蒼とした森のなかに、小さくて簡素な国境があった。私たちの通った時には暗いしめった森に、太い道を閉鎖する木のゲートが開いていて、国境を守る兵士はいなかっったが…

山裾の駅舎眠たし桐の花 はるみ

軽井沢の野鳥の森の中に、昔から天然の湧き水で出来た池がある。冬はスケート場になって、土地の子どもたちが遊んでいたらしい。それが、数年前に人工の手を加えて素敵なスケート場になった。10メートルはある池の土をすくい、新しい土を入れて電線を通した…

賑やかに別れて淋し蛍狩 はるみ

その夜は親しい誰かれを誘って等々力渓谷の蛍狩に出かけた。何処かで飼育された蛍と聞いていたが、昼間の緑滴る渓谷とは違って、無数の光がもつれ飛ぶ様子は、やはり目を奪われるものがあった。みなしばらくは、無言でその光景を忘れまいと、一心に見ていた…

逢はざれば青年のまま遠郭公  はるみ

ある年齢になると、同期会が毎年あるようになる。理由はリタイアして時間ができたとか、子育てが一段落したとか様々。とにかく若き日の知人、友人に再会したくなる。会えば過ぎ去った時間が嘘のように、話がはずみ別れがたい。幼名で呼び合い、気取りのない…

手の届くところに書棚灯涼し  はるみ

木下夕爾の詩集と句集を大切に硝子戸のついた本棚にしまっていた。けれど、ふと考えてみると、あちらの世界にお引越しをする日もそう遠くはないし、すぐ手の届く書棚に移した。すると、手にする機会が増え、夕爾の手作りのインクはどんな色かしら、などと考…

手のd届くところに書棚灯涼し

 もらはれてすぐ寝る仔犬花ミモザ  はるみ

娘の家に雑種の仔犬がきてから、あっという間に10ヶ月ほどがたち、ZENとは名付けられた彼はみるみる我が家族のスターになった。 犬の場合、大きくなったからと言って家事を手伝ったり、庭の落ち葉を掃いたりはしない。もっぱら、野沢温泉のすきー場を子供…

 行く春を水面の空に惜しみけり  はるみ

今年も千鳥ヶ淵の桜のつぼみがうっすらと色づき始めた。毎年、ここの桜に出会うのを楽しみにしている。初めに歩いたのは、むかし昔、吟行会で5句ほど句を作るためだったと思う。 池のボートに気をとられて見ていたら、ボートの向こうに都会の真ん中だという…

相生の一樹切らるる寒さかな  はるみ

今年のお正月は思いがけず、娘一家と、夫のもっとも若い友人「幼稚園に通園中」のご家族と楽しい新春のひとときを過ごした。どうして、その少年が髭を生やしたおじさんを、友だちと認めてくれたのか解らないが、なにやらしっかりと友人関係が成立したらしい…

身幅ほど雪掻いてあり女坂  はるみ

今週は何十年ぶりかの大雪が降り、東京の交通網と道路が混乱した。このことはかなり前から予告されており、なぜ、備えをしなかったのか、不思議でならない。 ちなみに当日は夕方から大雪になると言う予告があった。その日、仕事の予定が入っていた私は、「こ…