もらはれてすぐ寝る仔犬花ミモザ  はるみ

 娘の家に雑種の仔犬がきてから、あっという間に10ヶ月ほどがたち、ZENとは名付けられた彼はみるみる我が家族のスターになった。
 犬の場合、大きくなったからと言って家事を手伝ったり、庭の落ち葉を掃いたりはしない。もっぱら、野沢温泉のすきー場を子供たちのスノーボードと一緒に走り回ったり、田舎の家の近くの森を歩いて身体を鍛え、ぐっすり寝るぐらい。
 一方、ふたりの娘の子供たちは、すっかり大きくなって、5人とも田舎の家では暮らしをまわす力強いメンバーになっている。食事こそ作らないけれど、部屋や風呂場のクリーニング。食事の後片付けなど。きびきびと働く。娘たちは私より大分、子育てが上手かも知れない。
 ところで、食事の後片付けは夫も加わる。
 ある日、次女の当時12歳の長男と夫のチームが食器を洗っていたときのこと、夫が洗って、K君が拭く担当だった。夫のすすぎ方が悪かったのか、「おじいちゃま、泡が残っている」と数回注意された夫が、笑いながら、「里に帰らせていただきます」といった。ところが、「。。。、、、」彼から何の反応もない。
 夫は折角言った冗談が通じなくて、昔の日本の嫁に行く、という習慣から、お嫁さんのつらい立場、それが耐えられないときの、「里に帰らせて頂きます」までを説明するはめになった。
 「ふーん。そうか」といいつつも、男の子で、しかも半分アメリカ人の彼にはいまいち頷けない様子で、夫と私には可笑しく楽しい夕食後だった。