賑やかに別れて淋し蛍狩 はるみ

その夜は親しい誰かれを誘って等々力渓谷の蛍狩に出かけた。何処かで飼育された蛍と聞いていたが、昼間の緑滴る渓谷とは違って、無数の光がもつれ飛ぶ様子は、やはり目を奪われるものがあった。みなしばらくは、無言でその光景を忘れまいと、一心に見ていた。
その夜、寄った甘味処で着なれない浴衣のせいなのか、みんな少し高揚していて、ある友人は故郷の祖母の家のそばの蛍について語部のように熱く語り、故郷のない私達はその話を傾聴した。ちょうど友人の兄のグループと出会ったので、その噂などもして、楽しい一夜だった。
そのわずか数日後の学期末、仲良しが前触れもなく不意に転校した。父の仕事の都合ときいたけれど、蛍狩の夜は何も言わなかったのに、としばらく思い続けた。
それ以来、蛍狩によらず、楽しい事の後には何か起こリそうな気がしてならない。