海に向くホテルの小部屋明易し はるみ

四方を海に囲まれたオランダの旅が忘れられない。日本も島国だけれど、小さな島が海より低い国というのが中々納得出来なかった。アムステルダムを離れて田舎の方に行った時のこと、行きたい島が地図の上ではすぐ目の前にあるのに、周りの運河に橋が見つけられない。え、この国の人達はどうやって、目の前の島というか、陸地に行くのだろう。呑気ものの私達も良い方法が見つけられず、焦ってしまった。水は美しく、そよ風は薫風と呼ぶにふさわしいけれど、夕方迄にホテルにも戻りたい。
途方に暮れていても仕方がないので、村をぐるぐる回り、若者が集まっているところへ聞きにいった。すると、一人の若者が自分の車に乗り、「ついておいで」という。
私達の車のナビゲーターになってくれるらしい。農家の様な不思議な町並みを曲がると、岸辺で止まった。
そこだよ、という手の先を見ると小振りの船が止まっている。
それは、車が1台だけ乗れるフエリーだった。髭のおじさんがにこにこして車を誘導してくれ50メートル程の運河を渡してくれた。値段は当時100円ほど。
近頃、街に外国人が溢れ道を聞かれることが良くある。そんな時この事を思い出して時間があれば、交差点まで案内する様にしている。