帰宅して口きかぬ子や冬苺  はるみ

 私の住んでいる町はいわゆる学園都市で、私が帰宅する時、しばしば下校の中学生とすれちがう。声が大きいので、彼等の会話が近づいてくる時から、すれちがって、遠ざかる時までよく聞える。
 男子校なので、部活の話やスポーツの話題が多いいけれど、定期試験の時の会話に一日の疲れを忘れるようなエピソードがあった。
 その日は答案が返された日だったのだろう。何組かのグループが点数のことで、嘆いたり羨やましがったりしていたのだけれど、1年生と思われる3人づれの会話に思わず笑ってしまった。
 一人が「今日のテストさあ、68点と76点だったけど、2枚見せる時どっちを上にしたらいいと思う?」というと、「どちみち叱られるよ。」と言う少年にもう1人が、「うーん、僕なら68が上かな。」と助言していて、そのあと、どうなったかは聞こえなかったけれど、なんて平和な悩みかと。私にもきっとあったこんな年頃は宝物のような時間。