山茶花やすれちがふ子に日の匂ひ  はるみ

 我家の近くの小学校では、落葉の季節になると、住宅街の落葉を掃く、という課外授業がある。桜並木の紅葉した落葉を子供たちがグループに分かれて掃いているのは、童話の本の1ページを見ているよう。
 一心不乱に作業している子もいれば、ただただ落葉をかきまわしている、としか思えない少年もいる。そんな時、それを窘める少女の声はまるでお母さんのようで、小学校の5、6年生では、男子は格段に子供に見える。
 駅の近くで所用をすませて同じ道を戻ると、落葉はところどころ小山になっていて、道は見違えるようにこざっぱりとしていた。
 通り過ぎた、その時、何か後ろで声がした。振り向くと、落葉の山に散歩の犬が入って、くるくる回り出した。「いけません。いけません。」と飼い主が綱をひくけれど、よほど楽しいのか犬はしばらく止めなかった。赤いのや黄色い葉が空中に舞っている。
 そう言えば、昔飼っていた我家の犬も散歩の途中に、落葉だまりを見つけると、遊んでいた事を思い出した。落葉が動くと季節の香りがしたことも思い出される。