門川の風を呼び込む麻のれん  はるみ

 以前、川越にいった時には記憶になかったけれど、この度川越を訪ねてみると、昔、小江戸と呼ばれた頃は、水運で栄えたところだけあって、まわりに門川がある店があってなかなか良い雰囲気。
 そして、その門川をまたぐようにして木のベンチがおいてある。涼しげな植込みもあり、鯉の姿こそ見えなかったけれど、底に見える水草や苔は、外国からの観光客には、いかにも日本の夏という感じがするに違いない。
 私が出かけた当日は本当のところ、真夏のような暑さであったのに、昭和の家の裏庭のよう。腰掛けてみると、しばらく本でも読みたい気分さえしてくる。自宅の近くの美しい庭を見るのとは違って、町家ならではの涼しさといえる。人は昔から水のあるところに住んだという太古の人類としての記憶なのか、なぜか、くつろげてしまう。
 そしてふいに、6歳のころ、ある地方都市の町の門川に蛇が流れてきたことをふいに思い出した。いつも、その土地の人たちが野菜を洗っていたので、あれは泳いでいたのか、なにかの拍子に落ちてしまったのか、いまだに気になっている。

今年また入梅のあとの青き空  はるみ
毎年6月になるとなぜか真夏のような日が続く そんな1日川越に出かけた
久しぶりに訪れた 蔵の街は電柱が取り払われて 立派な観光地になっていた そこここに浴衣姿の青年や少女がいて お祭りでもあるのかと思って少しわくわくしてしまった
ところがすれ違ってみると 中国語らしき会話が聞こえて来る なんと観光用の貸し衣装だった 見た目はまるで日本人 いつの間にか川越は国際的な観光地になっていたのだ
きっと喜多院の五百羅漢の様々な姿も世界中に知られているのかもしれない.