梅が香やなにをさがしに二階まで  はるみ

 これは隣の町の一軒家に住んでいた頃の俳句。ちょっと寒いから上着を着ていこう、と思って2階に上がってみたものの、ちょうど窓の外の桜の枝に鳩がきていて見とれているうちに、「?」ということになってしまった。当時はそれが珍しかった。
 それから、何年たっただろうか。昨日のこと。横浜中華街の春節にでかけて、目的地の媽祖廟(まそびょう)という名前が思い出せない。道教の聖母ということは解るのに、どうしても記憶の抽き出しから出てこない。折角のスマートフオンの検索機能も役にたたなかった。
 帰り道、そういえば、むかし祖母が話しかけて来た時、「なあに?」と聞くと黙ってしまうことが時々あった。きっと何を話そうとしたのか、忘れてしまったのだろう。
 そんなことを考えていたら、びっくりするような会話が耳に届いた。私よりはるかに年長らしい人が、「次にお目にかかるのはセルリアンタワーね」と挨拶している。「セルリアン」なんでいう色の名前をどうやって覚え、忘れずに使いこなしているのか、肩を叩いてお聞きしたかった。