時計なき暮しを揺らすハンモック はるみ

 少し揺れている高い枝の先を、栗鼠がまるで小径を走るように渡っていく。久しぶりにハンモックで本を読んでいて、ふと梢の先の空を見ていたら、小鳥に混じって栗鼠の姿をみつけた。高原では毎年、暦と同じ感覚で秋が来る。
 今日、立秋に読んでいる本は、『しばらく』という本阿弥秀雄さんの歌集。あるかなしかの風のハンモックに、歌集の言葉が素直に届く。
 * もの食ふに食はず嫌いを直せども人知るに人見知り
 * まひるまを障子の内にみどりごみどりごの母眠るしづけさ
 * 雪降れる日暮れはさびし厨にてもの刻む音みじかくて止む