祖母の吹く祖父のハモニカ秋夕べ はるみ

 軽井沢の大賀ホールで『夏の雲は忘れない』ーヒロシマナガサキ、1945年ー。に出かけた。あの頃の人々の作文を、渡辺美佐子を初めとする7人の女優さんと地元の6人の中学生が朗読する。
 当時、アメリカの戦闘機の爆音を聞かせないために、子供にハーモニカを吹かせていたお母さんがいたという。なんというやわらかい心のお母さんだろう。
 テーマがテーマなので、気持ちが沈んでしまったけれど、家に帰って、庭のそこここに咲いているモナルダの花を見ていたら、心がゆるやかにほぐれてくるのがわかる。22年前、カナダのバンクーバー島で買い求めた種、毎年咲き続け、今は濃い緋色、桜色、白の花が群生している。ハーブの一種なので、風の運ぶ香りも気持ちを解き放つ。見上げると高原の夏雲はきのこ雲にはほど遠く、眩しいほど白い。