行く春の靴よりこぼす海の砂 はるみ

 小さな旅から帰ると、佐藤きょうこさんという方から葉書が届いていた。この俳句が海の砂らしい写真に印刷されている。インターネットの「俳誌サロン」というのを運営されていて、私の句集を掲載してくださったとのこと、俳句はたくさんの方に読んでいただきたいので、うれしい。
 金曜日から、滋賀県の坂本というところを訪ねた。うしろに比叡山、前が琵琶湖という立地条件で、比叡山の僧が引退後に住む里坊という屋敷が五十あまりある。ホテルで近江富士を湖の向こうに見ながら、空模様に刻々と変わる水面を見ていると、「行く春を近江の人と惜しみける」の芭蕉がすぐそこにいるよう。ちょうど、空が荒れ模様で、比良八荒(比良八講)というこの地ならではの季語を図らずも実感した。