すかんぽや子供の覗く水溜り はるみ

 1998年、この俳句を作った時、私は山荘で5歳と3歳の兄弟に笹舟の作り方を教えた。鋭い笹のふちで指を切らないか心配したが、彼らはこの遊びに夢中になってしまった。でも、なかなか水に浮かばない。あえなく浸水したり、横倒しになったりする。この年では無理かしら、と思った頃、どうやらコツが掴めたらしい。水溜りにバランスのとれた笹舟が2つ浮かんだ。
 「出来たじゃない。かっこいいな」と褒めたが、なにか不満顔。聞くと舟が動かないという。そこで思い切り息を吹きかけてみたら、面白いように動く。とたんにぴかっと2人の目がひかっった。そして腹這いになって、フーフーと息を吹きかけ始めた。笹舟は面白いように、小さな彼らの湖を右に左に行き来した。