伝言板に猫の手配書花ぐもり はるみ

 昔々、駅には伝言板というのがあって、それを読むと短編小説のような味わいがあった。「2時間待ちました。今日はかえります。日にち間違えたのかな? M.K.」に可憐な少女を思い浮かべ、「健太、俊介先にいくぞ。例の店。R.S.K.D.」これは運動部の仲良しかなと勝手に日焼けした少年たちを想像した。「文庫 美しい村 拾いました。角の交番に届けてあります。」落とし主はセーラー服の美少女かしら、それとも以外に男性、などと人を待つひとときを楽しんだ。
 その頃「三毛6ヶ月迷子になりました。」というのがあって、似顔絵が画鋲でとめてあった。桜も6分咲きの頃、風もない夕方だった。