花明りむかしむかしで眠り落つ はるみ

 私たちの10年があまり変化がないのに比べて、若い人たちの10年は、目をみはるような変化をする。家に泊まりに来ると、キャッチボールをしたり、魚釣りをしていた少年が、大学受験の報告に上京した。今までも大きくなったと思っていたが、家の中で会うのと、街で会うのとでは、まるで印象が違う。待ち合わせの改札口では、予想よりはるかに高いところから素敵な青年に、声をかけられ驚かされた。
 小さい頃、公園を散歩した時は、私が上から話して、しゃがんで彼の話を聞いていたのに。膝小僧をすりむいて泣いていたことも、毎晩、どうしても3冊本を読んで欲しいと言って、そのくせ、すぐ眠ってしまったことも嘘のように、落ち着いた青年になっている、
 けれど、レストランで話をしていると、時折、絵本を読んでもらっていた頃の笑顔になって懐かしかった。